全員が相続放棄をしたら不動産はどうなるか
1 不動産を売却して借金を返済し、余ったら国のものになる
相続人全員が相続放棄をすると、不動産の所有者がいなくなります。
所有者がいなくなった不動産については、売却されて現金化をして死亡した人の借金の返済に充てられて、それでも余った場合は国庫に帰属します。
2 不動産の処分は相続財産清算人が行う
国庫帰属までの手続きは自動的に行われるわけではなく、相続財産清算人が行います。
相続財産清算人とは、家庭裁判所が選んだ弁護士等の専門家で、利害関係人などが裁判所に申立てをすることで初めて手続きが始まります。
裏を返すと、相続財産清算人が選任されないと、不動産は売却されることなくそのまま放置されることになります。
相続財産清算人の申立てには予納金として数十万円以上を裁判所に納める必要があるため、実際には相続財産清算人が選任されることは稀です。
特に、不動産が売却しても価値がない場合は、相続財産清算人を申し立てて売却代金から借金を回収しようとしても、費用の方が高くついてしまい赤字になってしまうこともあるからです。
3 相続放棄をしても不動産の管理責任がある
相続人全員が相続放棄をしても、相続財産清算人の選任の申立てを誰も行わなければ、不動産は何十年も放置されることになります。
(近年は、この不動産の放置が社会問題になっています。)
その場合、相続放棄をした人には、不動産を管理する義務が残る場合があります。
不動産を管理する義務としては、様々なものが考えられますが、例えば、屋根瓦が風で飛んで隣家を損壊しないように補修をするであったり、塀が崩れて通行人に怪我を負わせないように撤去するであったりといったことが考えられます。
仮に、不動産の管理をせずこのような事故が起こった場合には、相続放棄をしていても、治療費や修理費などを賠償しなければいけなくなる可能性があります。
不動産の管理責任については、令和2年より前に死亡した人の場合は相続放棄をした人全員が負う可能性があります。
令和2年以降に死亡した人の場合は、法律改正により、実際にその不動産を占有・管理している人は管理責任を負う可能性があり、そうでない相続人は管理責任を負いません。